Monday 16 November 2009

タラバガニ


先日カムチャツカに帰国すると町最大規模の市場が近代的な建物に変化していました。なので早速中を覗いてみると売っている物は以前と変わらない様子でした。
この近代的な建物ですが、僕がここに赴任してきた2年半前の段階で既に建設が開始されていました。建物と言っても2階建ての小規模なものなのですが、工事が一向に進んでいませんでした。しかし工事がストップされていたという訳ではないようで、いつ見ても数人の作業員がタバコを吸っていたりチャイを飲んでいたりしていたので工事自体は進行していたのでしょう。少なくとも2年半の間は膠着状態が続き、この夏に堂々完成したという事です。
その近代化した市場の中を友人1名と一緒に歩いていると、その男が突然「良い事考えた」と言い、何かと思ったら寿司を作ろうという事で、僕にとっては全然良い事では無かったのですが同意すると、具材にという事でその男はタラバガニを購入。1kg購入で1500ルーブルでした。日本円にしておよそ4500円。1kgも入って4500円と考えれば安いのでしょうが、日本の感覚で言ってもあまり安い買い物ではないのにカムチャツカの給料と比してこの値段は少し気が引けます。それにそもそも1kgも同じものを食べたくないです。因に昨年度のカムチャツカの平均月収は15000ルーブルだそうなので、その10分の1を支払わないとタラバガニは食べられないという風にも読み取れます。
タラバガニは正にカムチャツカの名物で、日本に輸入されているものの多くもカムチャツカ産だそうです。ロシア語名はカムチャツキー・クラブだそうで、それが原因で英語でもカムチャツカ・クラブだと信じている人が多いのも事実です。
このタラバガニですが、日本での販売価格に比べると約3分の1程度という事ですが、運送料等を差し引くとこれは対外卸売り価格と殆ど同じだそうで、地元だからと言って安く売るわけにはいかないという状況のようです。
カムチャツカでは漁に関するライセンスが厳しく、自分に与えられたライセンス以外の魚介類を採ってしまうと密漁という事になってしまいます。頻繁におこるケースとして、鮭の漁のみを行って良いライセンスのものが、網の中にタラバガニが掛かってしまった場合にはこのタラバガニを捨てなければいけないという事です。オホーツク海周辺ではこのような事が頻繁に起こるらしく、1トンを超えるタラバガニが間違って引っかかってしまうという事もあるそうです。そしてその際には勿論廃棄をしなければいけないのですが、海の中に捨てにいく事のできる量ではないのでこの1tのタラバガニを浜辺に放置して帰っていく漁者達も少なくはないようです。
実際に写真でその様子を見てみると中々気持ちの良いものではなく、ライセンスという都合でものが無駄になるのという状況に関しては環境活動家もジャーナリストも大して問題視しないという状況も興味深いと思います。
ライセンスがない場合は1tのカニをゴミのように扱い、ライセンスがある場合はこれが大金になるという訳で、これに至ってカニの存在意義が何だか哀れでしかしそれはカニだけの話ではないだろうしそういう風に社会に扱われる人間というのもこれは多いのだろうなあと考えますね!

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