Saturday 23 February 2008

戦う映画監督


コソヴォ独立に関するニュースが連日トップです。ロシア政府は、独立は国際法違反との理由でその不当性を訴えています。それによって我らがプーティン様はセルビアでもヒーローだそうです。

もう一人のヒーロー、戦う映画監督エミール・クストリッツァもベオグラードで演説しました。「コソヴォはセルビアのもの」という集会にアメリカから駆けつけたそうです。
彼の映画はどれも興味深い内容であり、直接的には触れない物の背景には常にバルカンでの紛争が存在します。
ムスリムの家庭で育ったボスニア出身という民族背景があるようで、セルビアの愛国主義者と言う事ですが、最近は名前もemirからよりスラビックなnemanjaに改名もしたそうです。

彼が何の為に音楽を始めたのか、何の為に映画を撮り始めたのか。純粋にロックと映画が好きであった為に他ならないのでしょうが、何故彼の映画が世界中で評価されるのかといったらその制作意識の中にある真実を伝えようとする心なのでしょう。
それを今まで自身の作品で充分に証明してきた人間の演説には、政治家や活動家、学者などには到底辿り着けない次元での説得力を持っていると感じました。
セルビア国内でコソヴォの独立をサポートしようとしている団体などには「裏切り者」という言葉を使い強いテンションで発言したそうです。彼の意見に賛成するかどうかは別として、ここまでの名声を得ている映画監督が映画業界では強い影響力を持っている国々とは反対の意見を公に述べるというのは、彼が何にも迎合せずに本当の意見を述べているという事なので、やはり非常に説得力があります。つまり、一つの意見として自分の中での判断材料になります。
セルビアの愛国主義者といっても彼が戦争を肯定している訳ではないという事は、彼の発表してきた映像で既に証明されているというのも大きいでしょう。
当然ですが、1つの問題に対しては様々な意見が存在する訳で、単純に「賛成」「反対」で片付けてしまうのは正しい方法ではありません。敵対している2つの都市で、それぞれを支持している国々の国旗を持って集会に集まっている様は、何とも奇妙に感じます。

クストリッツァさんの映画はしかし、どれも長過ぎて僕は苦手です。

Saturday 16 February 2008

BLP復活


以前このブログでロシアは比較的報道が自由に感じると書きましたが、その際の僕の意見として、インターネットでも情報が収集できるしテレビでも諸外国のニュースを積極的に報道しているために日本などの執拗にドメスティックな報道に比べたらとても自由だと書きました。
しかし情報収集の可能性と報道の自由とは、90年代までの話ならわかりますが現代においては全く関係が無い気もします。
毎日20分の海外ニュースプログラムがあるわけで、そのプログラムこそが中々いいなあと思う原因ではあったのですが、今更ながら20分の中に毎日の出来事の何を纏められるというのかという話です。とにかく、この程度のプログラムは海外情報誌と大して変わらぬ内容であるためにあまり参考にはならないでしょう。ネットですぐに入手できる情報を軽くテレビで流す事によって受け手がその背景への感心を高め、後にインターネット等で調べるという流れも期待できますが、大部分の場合はそのコンパクトに纏まった内容に満足して終わりでしょう。人生はそんなに暇ではない訳ですから。
それは当然として、最近やはり気になるのが3月2日に設定されている仮想選挙に関する報道です。選挙前には当然選挙報道が加熱するわけですが、ほぼ確定している次期大統領が立候補を表明してからというもの毎日テレビのニュースに彼の顔が出て来ます。どこそこに視察へ行ったとか、そういう類いのニュースです。しかし他の候補者はどうでしょうか。ロシアではこの第一統がメディアも確保しているという話を良く聞きますが、滅多に他の候補者の話は出て来ません。出てはいるのでしょうが、出演時間は平等ではないでしょう。しかも極めつけが、2008年に入ってから放送されている「ガスプロム」のTVCM。株式会社のCMですが、CM全体のヴィジュアルイメージは赤青白で、強い国家、幸せな家族、そしてCMのクライマックスにはプーティン様が登場します。これは全く、政党の宣伝と何ら変わりはないように見えてしまいます。
このような状況で決定した国家元首が今後最良のパートナーである首相とともに国を運営していく事に成る訳で、そこに喰い付こうとする他の政党の精神力というものは相当なものなのかなあと感じると同時に、何のためになどとも思ってしまいます。この状況をあと数年我慢して、いよいよという所で革命でも起こすのでしょうか。こんな時こそ、BLP(Beer Lover’s Party)の復活を期待します。無血革命ではなく、無悩革命を提案したいですね。
写真はテレビで熱弁するジリノフスキー氏

Wednesday 13 February 2008

日本の映画


学生約30名に日本の映画について知っている事を話してもらい、内数名に日本映画の歴史や特徴についてプレゼンテーションをしてもらいました。
歴史や有名な監督などについてはよく調べてくれましたが、日本映画の特徴となるとこれは自分で観ないと判断できないところであり、そのような環境にない彼等には少し難しかったようです。
黒澤監督や溝口監督辺りは西洋でも人気の基本監督とされていますが、やはりそれは映画好きの人達の間での話であり、一般的な大学生ともなると話は別です。この2名の監督など名前も聞いた事が無く、しかし北野武等は皆好んでみているようです。日本映画といえば、タケシの”座頭一”、そしてホラー映画の”リング”だそうです。感覚としては、日本人に「タイの映画といえば?」と質問すると、”オンバーク”や”アタックナンバーハーフ”等を想像してしまい、映画好きの間では有名な若手監督は名前も挙がらないというのと同じだと思います(作品の質では無く知名度という意味)。
西側諸国同様に、リングのヒットを皮切りに日本のホラー映画が流行り始めたそうですが、アメリカのホラーは単調だが日本のものは独特だという意見が多かったです。
リングを見たのが切っ掛けで日本に興味を持ったなどという意見もありました。どうなんでしょうか。

世界中どこでも映画ではやはりインディペンデントの地位は低いものですが、このような街ではメジャー映画以外は観る事ができないと言っても過言ではない状況もあります。それはロシア国内の映画であっても同じです。
しかし東京も含む世界中の一部の大都市ではシネマテークやミニシアターが盛んなものの、それは一部のマニア向けという状況はあると思います。
日本人は溝口監督作品を観ないし、ロシア人はソクーロフの映画は観ないといった感じだと思います。
しかしトランスフォーマーなんかは東京でもカムチャツカでも大ヒットというのも悲しいですね。トランスフォーマー大好きですけど。コンボイ司令官強いし(写真1)。主人公の男子がバンブルとの友情を通して人の為に自分を犠牲にすること学ぶし。
アメリカの大作はやはり偉大ですね!

Friday 8 February 2008

動画

動画貼付け方法を覚えたのでやってみました。
田舎に住んでたって、こんなに便利な事もできるっていう意味です。

representation of the intellectuals(2006)-Trailer

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Friday 1 February 2008

суверенная демократия



大統領の選挙も迫って来ていますが、もう誰に聞いても既に大統領という事になっているメドベデェフさんが大統領の課題を発表したそうです。テレビのニュースとインターネットの解説を読みましたが、よく分かりませんでした。
ロシア国家の最優先するものは、「市民の幸福」だそうです。
革命や大きな変革も起こさないそうです。
つまり今までと何も変わらないという事のようです。今のままでもここの市民の大半は、「自分達は幸せだ」と感じているので何もする必要はないです。勿論全員に話を聞いたわけではないのですが、現状に不満があっても、それは仕方が無い事だという意見以外あまり聞いた事がありません。
次期大統領は、大きな変化を起こす事なく、少しずつ国を発展させるそうです。
なんだかはっきりしません。
そこで、現政権のイデオロギー担当が考えたと言われる新しい主義が登場しました。

「主権民主主義」

凄いですよね。新しい主義。元々は暴動を抑える際に現政権が発し、ここ2/3年間よく登場している言葉だそうですが、ロシアのスタイルの民主主義だそうです。主権民主主義。どこに主権があるかによって何主義かは変わると思うのですが。
ロシア語標記で、суверенная демократия, 英語にすると sovereign democracy となります。sovereign とは、辞書によると「君主、統治者、支配者、主権者」と書いてあります。つまり、支配者によって齎される民主主義。英語で書かれた解説によると、
liberal democracy(自由民主主義)ではなく、managed democracy(管理された民主主義)との事です。

管理された民主主義という事なので、色々な事を管理したところで、民主主義である事には変わりがないということです。
しかもそれに対しておそらく多くの民衆は、「おお、これはロシア独自の民主主義で、アメリカに迎合する他の国とは違う!」などと考えているのではないでしょうか。この田舎町に住んでいるとそう感じます。

こうなってくると民主主義という言葉の定義が気になるので、国語辞典で調べてみると、
「人民が権力を所有し行使する政治形態。国民主権・基本的人権・法の支配・権力の分立などが重要とされる」(抜粋)。
国民主権であれば、管理されていても問題はないという事ですね。よかった。