Thursday 22 May 2008

ガスプロムの世界制覇を目指して


先週はゼニトが2−0でレンジャーズに勝利し、UEFA杯制覇。レーニングラードは夜通し大盛り上がりだったようです。ニュースでは前後3日間ほどこの話題に多くの時間を割いていました。1週間経たずしてロシアのホッケーナショナルチームがカナダを4−3で下し、こちらも世界制覇。UEFA杯優勝/ホッケーW杯優勝と立て続けにきて、国民は大盛り上がりです。これに対して大統領及び首相もコメントを大々的に発表しています。
ゼニトに関しては彼等がオーナーのようなもので、2人ともレーニングラード出身。しかも大統領はゼニトのサポーターとして有名です。日本でもレッズがACL制覇の後に何か内閣府から賞を貰って内閣総理大臣に、あろうことかFUKUDAとプリントされたユニフォームをプレゼントして内閣総理大臣はにやにやしていましたがそれとは訳が違います。我が国の総理大臣ももしかしたら公言できないだけでレッズサポーターかもしれませんが。

ホッケーの世界制覇に関しては、メンバーをクレムリンに招いて何か儀式をしていました。
そして昨日はUEFAチャンピオンズリーグ決勝がモスクワで行われ、マンチェスターUが優勝、ロシア全土でも前代未聞の盛り上がりをみせたらしいです。モスクワからどのヨーロッパ諸国よりも遠いこの町でも何故か大盛り上がりでした。ゼニトのUEFA杯制覇によってフットボールファンが急増している印象を受けます。そしてこのマンチェスターUはリーグ王者として、カップ王者のゼニトと戦うために更に世間は盛り上がってます。

チャンピオンズリーグ決勝に関して補足すると、もう1つのファイナリスト、チェルシーのオーナーは有名なオリガルヒ、ロマン・アブラモビッチである事は誰もが知っていると思いますが、そんな彼はモスクワやレーニングラードではなく、チュクチという自治管区の知事です。チュコチはカムチャツカ州の隣で、首都のアナルディは実はここペトロパブロフスクよりもかなり緯度が高く、経度もここより若干東よりです。時間はカムチャツカと同じ時間帯を採用しているのでこことの時差はありません。大富豪だと知事になれるという素晴らしいシステムです。しかし大富豪であるが故に地元では支持率が高いと聞きます。チェルシーを金満クラブにしとのと同様、金満自治管区を実現しはじめているそうで、インフラの整備や経済基盤の整備、更には地元の子供達をチャーター便でチェルシーのホームゲームに招待など、金こそが全て、市場原理主義万歳と思わせてくれる活躍を見せているため、実際になんの整備もされないペトロパブロフスクなんかよりはよっぽど住みやすいだろうと思うし、そんな金持ちが知事で、知事が自腹で町の整備をするなんて、それは人気が出る事でしょう。
という事でここペトロパブロフスクの住民は、アブラモビッチを嫌っています。チャンピオンズリーグ決勝も、皆マンチェスターを応援していました。大宮サポーターが浦和を羨ましがって嫌うようなものでしょうか。決勝はモスクワで行われたため、時差9時間でこちらでは朝からのスタートでしたが、スポーツバーにはフットボールファン(殆どが流行りに乗ってるだけ)が集まり、朝からビアを呑みながらの観戦となりました。

同様にTVニュースによると、アナルディでも地元のパブにチェルシーファンが集結し、声援を送っていたようです。アナルディの住民にとっては、チェルシーは自分達のクラブであるという認識があるようでした。TVの街頭インタビューでも、真面目そうなオジさんや伯母さんまでも、今日はチェルシーが勝ちますなどと答えていて、その人気の浸透振りが伝わって来ました。

マンチェスターが優勝というのはロシア人にとってはある意味良かったと僕は感じています。なぜなら、今月はじめの大統領交代式からのロシア国民の民族意識の高まりには、少し恐怖感を抱いていたからです。簡単な流れを整理すると、

大統領交代式→戦勝記念パレード→UEFA優勝→ホッケーW杯優勝。

これだけのイベントが間隔を空けずに起ったわけで、国民の意識統一、大ロシア復活を意識づける結果となってしまっています。国民としては真っ当な反応なのでしょうけど、部外者としてはちょっと怖いです。

UEFA杯優勝が凄い事なのはわかるのですが、そうは言っても所詮はカップなわけで、あまりにもTVなどでワールドチャンピオンなどと連呼し、ここの住民達もそう思っているものだから会話の流れで口を滑らせてそんなに凄い事ではないのでは?ACL優勝の方が難しいのでは?などと言ってしまい、大変な目に遭いました。カップと言っても取ろうと思って取れるものではないというのは浦和サポーターとしては良く知っていますので、これ以上は何も言わないようにしようと決めました。
因にカップを制した昨年リーグ王者のゼニトですが、今期リーグ戦前半終わって16チーム中14位と低迷しています。この低迷っぷりはかなりのもので、こういう点からみても浦和が如何に凄いかと考えてしまいます。

話を戻すと、もし昨日チェルシーが勝っていたら。
世界王者のゼニトと、チェルシー。ゼニトもチェルシーもロシアのチーム。という具合に、更に民族意識が高まってしまう方向に行っていただろうと思うので、マンチェスターが勝ってよかったなあと思います。
大統領/首相 VS アブラモビッチ
という事になっていたわけで、そう考えると怖くて泣いちゃいそうです。国内一の企業を抱える国家元首 VS 一連の騒動の中逮捕されなかったオリガルヒ。
今後ゼニト(ガスプロム)が本当に力をつけて、チャンピオンズリーグ決勝を戦う日が来て、その相手がチェルシー。そうなったときに、ゼニトに勝ってしまったアブラモビッチは次の日に脱税容疑で財産没収なんて話はあるわけないので想像しないで下さい。
その後CWCで、強すぎるが為に間違ってゼニトに勝ってしまったレッズにはいったいどういう制裁がくだされるのでしょうか。
市場原理とフットボールはリンクします。フットボールは誰も死なない戦争と言いますが、それは結局の所、経済戦争に発展しているだけではないかと思ってしまいます。
しかし昨日のマンチェスターの勝利は、そういう意味でも、フットボールは金や政治力だけのスポーツではないと言う事を再確認させてくれた気もします。

いずれにせよ、大企業がバックにつくというのは妬まれはするものの、スポンサーが離れてしまって2部に降格しちゃうようなチームがいっぱいある中有り難い事なので、我々は政治論抜きにフットボールを楽しみたいものです。

写真はガスプロムの公式ページより、サハリンⅡの開発風景。

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